雑貨の学校の修了生の雑貨店レポート
この春、国立(東京)にオープンした「SAKKAnoZAKKA(さっかのざっか)/作家の雑貨」はハンドメイド、工芸作家の雑貨作品を扱うセレクトショップ。
*取材、撮影、執筆は09年5月
9坪(29.7㎡)の店舗は古材をふんだんに使った一見、和風なしつらえだが、国籍不明のガラス、陶磁の食器、木工玩具、バックやポーチなどの袋物、様々な素材のアクセサリー作品などが展開されている。
同店の立地は最寄りのJR国立駅から徒歩7、8分の商店街のはずれに位置し、決して一等地とは言えない。
そして、全く畑違いの業種(教諭)から転身した新米オーナーがひとつひとつ手探りで行う店作りや運営は、ベテランの経営者から見ると、こころもとなく、歯がゆいやり方だらけ。
まず、開店して数ヶ月経っているにもかかわらず、「開店告知」のDM(ダイレクトメール)も未だにデザイン制作中であること。
元美術教諭であるオーナー自らがデザインしているが、自店の魅力を十分に伝える内容になっていないからだと言う。新店の開店告知の時期として“許される”あと1,2ヶ月以内にできれば良いとのことだそう。
店頭の造作や内装も、全てを業者まかせにせず、オーナー自らが試行錯誤を重ねながら、手作りでまだまだ制作進行中。
徹夜して油絵用のキャンバスに手描きした看板。店頭のミラーの枠のペンキ塗り替え。商品をつり下げる際も数時間かけて釘を打つ位置を熟考。
業者への発注、備品の購入で簡単に済むようなことでも手間と時間を惜しまない。
もちろん、品揃え、開拓に関しても同様だ。消費不況まっただなかの今春オープンにもかかわらず、同店の商品は低価格をセールスポイントにはしていない。
例えば、グラスひとつとっても、2,500円〜と手作りのガラス作家
の“作品”としては割安感があるが、グラス“商品”としては、少し高価である。
既存雑貨店のベテランバイヤーであれば、間違いなく今は仕入れを躊躇するであろう価格帯の商品ばかり。時代の気分=「低価格志向」を知ってか知らずでか、こだわりの高額な商品ばかり、自信を持って展開している。
その開拓の方法も、ひとりひとりの作家の作品を個展などで、時間をかけ、じっくりと確認。そして作家との直接の面談を通して、作品だけでなく、作家の志向(考え方)までをも判断材料にして仕入れを決定する。
数千円のたった1点の作品の仕入れであっても、丁寧に吟味、交渉するという。
取り扱う商品(作品)を、吟味することはもちろん大切。でもとりあえずは数百円、数千円の利益にしかならないだろう取引に、たくさんの時間と手間をかけるのは、ベテランからするとナンセンスかも知れない。
雑貨屋さんらしさを凝縮したショップ
しかし、立地が悪くとも、同店に来店されるお客様は少なくない。
最近の「お散歩(町の散策)」ブームのなか、国立は都内有数の人気エリアであり、知的でのんびりとした雰囲気もある国立エリアに同店はぴったりなのだ。
天気の良い日の散策途中に、同店を“発見”し、入店するお客様は途切れることがない。
加えて取引のある作家の口コミで、わざわざ足を運んでくれるお客様もたくさんあり、意外なほど集客力がある。
雑貨店看板オーナー自らが、制作する内装や看板、各種の販促ツールも、そのアイディアや手作り感がお客様に好評。
時間と手間をかけて、金額の大小に関係なく、丁寧に交渉する姿勢は作家に評価されている。一部の気むずかしい有名作家からの信頼も得られだした。
ちょっと高額と思われる肝心の商品群も、その魅力を接客やPOPで丁寧にお客様に伝えることで予想以上の売上を維持している。
既存の公約数的な「小売業の成功のルール」に反することだらけの同店だが、「オーナーの個性的なこだわり」、「ちょっとだけ贅沢」、 「ゆとり感」、「脱マニュアル」、「手作り感」、「アイディアフル」…等のいわゆる「雑貨ショップ」、「雑貨屋さん」ならではの素朴な魅力を体現した ショップと言えるだろう。
「SAKKAnoZAKKA」は、今後の洗練が楽しみな雑貨ショップであり、国立エリアの新たな名物雑貨店となるかも知れない。
文・写真 富本雅人
senken新聞09年5月7日執筆文を加筆修正 (C)masato tomimoto
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