雑貨の学校修了生の人気雑貨店オーナー達
女性の憧れの職業NO.1 である“雑貨店オーナー”。
10代の少女や学生から主婦、雑貨店経営を次の活躍の場と考えるキャリアウーマンまで、幅広い年代と職業の女性から支持されているのはご承知のとおり。
雑貨店経営はビジネスとしての営利追求に加えて「雑貨が好き」「ファッショナブルな仕事」「店をステージに自分が輝ける」などのたくさんの支持される理由があり、世の女性達を魅了し続けている。
ここ10年位前から、女性オーナーが経営する小規模な雑貨店の数はさらに増加し、今や無視できない“カテゴリー”。
女性オーナー達のリアルな心の動きや考え、運営の工夫は読者の皆様にとっても関心が高いのではないだろうか。
人気、有名雑貨店の女性オーナー4 名に集まってもらい、雑貨店を開くに至ったきっかけや開業、運営に対する工夫、将来の夢などを本音で語ってもらった。今号から2 回にわたって、雑貨店女性オーナーの座談会録をお贈りする。
参加者(略歴は下記)
川瀬真理子さん: ALOHA LOVERS(東京原宿)
大山美枝子さん: カジュアル雑貨ビューピィ(ネットショップ)
O.Aさん:T(東京下北沢)
村越加奈子さん:mf collection gallery(東京駒込)
司会: 富本雅人
— 活き活きと素敵に雑貨屋さんを営む。開業ストーリー編—
富本: 皆さんの共通点は雑貨店オーナーとして、活き活きとされて、女性らしいやわらかさのある店づくりを目指していること。しなやかだけれど、しっかりしているというか、外柔内剛を地でいく方々だと思っています。
あと僕の講座(雑貨の学校)を受講された方ばかりです。理由は宣伝になるから(笑)と言うのは冗談で、皆さんの雑貨屋さんの企画や開業準備の段階を見たり、開業後も折々に話をしていて、様子がある程度わかっているつもりの僕としても成功されているんだなぁ、と思ってるからです。
まあ、成功の定義っていろいろあると思いますが、素敵に活き活きと幸せな感じでやられているなと思っているということです。それともちろん本音が聞けそうと言うこともあります(笑)。では自己紹介的にお店を開くにあたっての経緯を説明してください。
なぜ雑貨屋さんを開いたのか
大山:『カジュアル雑貨ビューピィ』というネットショップをやっています。私がショップをはじめたのは03 年ですのでもう7 年前です。
最初は路面の雑貨屋を始めたいなと思っていて、それを実現するために先生の講座を受講しました。今日いらしているOさんと一緒に勉強したんですよ。半年間指導してもらって、その年にネットショップを立ち上げました。今は楽天とヤフーに出店しています。
富本: うちはネットショップの講座でないんですけどね(笑)。大山さんのショップは楽天での評価がとても高いそうですね。
大山: さらによいショップにしたいと毎日がんばっています。
村越: 東京の駒込で『MF コレクションギャラリー』という雑貨のお店をやっています。以前はOL でした。お店を開くきっかけとしては、義母がブティックを25 年間やっていて、その半分のスペースをリニューアルして雑貨店にしました。
雑貨のビジネスに関してはあまり詳しくありませんでしたが、主人も私も前からインテリア雑貨が好きで、リニューアル後はぜひ雑貨店にしたいと思っていました。
主人が見つけた富本先生の本「はじめる雑貨屋さん」を読みまして、雑貨の学校でセミナーを受講しました。06 年に本格的に雑貨店としてリニューアルスタートしました。
富本: 規模や取扱商品、村越さんのキャラクターも含めて多くの女性の“理想の雑貨ショップ”として人気が高いですよね。
村越: いえいえ(笑)。徒歩5分ほど駅から離れた住宅街ですが、おかげさまで最近は多くの皆さんに知っていただけるようになったと思います。
デザイナー、ライターから転身
川瀬: 雑貨店を開くまでの経緯としては、まず10 年程前にMAC に興味を持ちました。それでデザイン関連の専門学校に通いながらWEB 関連のデザインの仕事をしたり、今のお店とは全く違う商品を販売するネットショップを運営していたんですね。
そのネットショップをやっていたときに、「お客さんとリアルに接したい」と思うようになったんです。お店のノウハウを勉強をしたいと思って03 年に雑貨の学校を受講しました。
修了後、いろいろと準備をしていたときに良い物件に出会えまして、06 年に裏原宿(東京渋谷区)に『ALOHA LOVERS』というハワイアン雑貨とウェアのお店を出しました。
もともとハワイが大好きで、ハワイ関連の商品なら、と思って考えたテーマの店なんです。
富本:「原宿のハワイアン雑貨と言えばALOHALOVERS」というイメージも定着しましたね。
川瀬: 今のようにハワイアン雑貨がブームになる前に、注目度の高い場所に出店できたのは運が良かったと思います。
O: 私は音楽雑誌の編集とライターをやってました。仕事をしながら趣味でアメリカのユーズド(中古)のおもちゃをや雑貨を集めていまして、そのうち日本で買うだけでは満足できなくて、アメリカにまで行って買うようになってしまいました。
それで、自分用だけでなく、日本のフリーマーケットやオークションで販売するために、仕入れてくるようになったんです。そのうちお店をやりたいなと 思いだしたんですが、小売店に勤めた経験がまったくなかったので先生の講座を受講することにしました。陳列も接客も一人ですべてやりたかったので、小規模 な物件限定で探したんです。
人気のエリアで、しかも小規模(10 坪以下)で家賃が手が届く物件ってなかなかないんです!。ずーっと探していて、やっと見つけたのが今の場所です。いろいろ大変なこともありますが、何とか5 年やってこれたという感じです(笑)。
これからショップを開く人に
富本: これから皆さんのように雑貨店を開きたいと思っている人に向けてなにかアドバイスはありますか?
村越: 私は義母にいろいろと教えてもらったのでラッキーだったんです。そんな機会やお身内がいない人はどんな店舗でもいいので、接客の経験を積んでおくと良いと思います。雑貨屋さんてせなく、商品が違うお店でもいいですし、カフェなどの飲食店でもいいですよね。
川瀬: そうですね。実務経験は大事ですね。できれば、大変な仕事や忙しい仕事、言い換えると「何でもやらされる。やらせてもらえる」仕事が経験の為にはいいと思います。人使いの荒いところの方がいいかも(笑)。
富本: ネットショップも同様にやりたい人が増えていますよね。
大山:そうなんです。コストなどを考えると実店舗に比較して格段に手軽なので、どんどん参入してくるんですよね。入れ替わりが激しくて、その中で「残る。続け る」ということがとても大変になっています。ネットでお買い物をする人も増えている以上にショップが増えているのでますます厳しくなってきています。
あと、考えているのは、ネットショップはどんどん進化していく業態なので、ページを作ったら売れるという時代はもう終わっていて、常に新しいテクノロジーを知らなければならないと言うのがとても大変だけれど大切ですね。
富本: 今は何ですか。「twitter」ですか?
大山: もちろん、やってます!
富本: さすが(一同笑)。
大山: でも、売上にすぐに直結するものではないですね。“お悩み系”商品の「外反母趾の方に向くスリッパです」などの特性をセールスポイントにする商品のお知らせには役立つかもしれないですが、「お洒落な新商品」という、解釈があいまいなお知らせには向かないみたいです。
それと私が大切だと思っているのは、お客さんとして他のネットショップをよく見てたくさ
ん買い物をすること。自分で買って気づく事って多いですよね。注文のシステムとか、配送の梱包状態がどうなっているかなど、実際に買ってみる事で、随分と勉強しました。
富本: 路面店の場合も一緒ですよね。リサーチで店頭や商品を見るだけでなく、お客として買う。会計処理やラッピングを目の当たりにする、商品を自分のものとして使ってみることでわかることは多いですね(一同うなづく)。
私の販売・接客テクニック
O: 販売の経験はまずあった方がいいと思います
富本: Oさんのお店に行って見ていると、上手に接客しているじゃないですか。いわゆるコンビニとかデパートのステレオタイプな接客ではないけれど、カジュアルな感じの接客はお店にあってますよ。多くのお客様に親しみを持ってもらえているんじゃないかな。
O: それは、お客さんにもよく言われます(一同笑)。特にお年寄りのおばあちゃん、おじいさんから。若い子向けの商品ばかりなんですけど、意外と中年の方やお じいちゃん、おばあちゃんがよくリピート来店してくれて、「こういうの入れてくれ」「ああいうの無いの?」とかを気軽に言ってくれるんです。
富本: それはね、とてもいいことですよ。年配の方が「若い子向けの店だけど、私が行っても感じよく相手してくれる」なんていうのは格段にうれしいはず。
O: 私がこんな感じ(笑)なので、安心してリピーターになってくれています。
富本: Oさんのキャラクターと、あと、来ていただいてありがたいって言う気持ちが、自然に伝わってるのかなって思います。デパートとかコンビニでいわゆるきっち りとした接客業の経験をして、それだけでやってたら、今みたいな独特の接客スタイルは無かったのかもわからないですよね。
O: かもしれないですね。でもお客さんって、何言ってくるかわからないので、場数を踏むという意味でどこでもいいので、一回勤めた方がいいと思います。
富本:雑貨屋さん以外の 全く違う分野の小売店でもいいし、飲食店でもいので、接客慣れしたほうがいいと言うことですね。
O: はい。
富本: いわゆる「いらっしゃいませ」からはじまるオーソドックスな販売接客の考えや技術は持っているべきだし、基本はそれだと思います。お客様優先。「お客様の為に店舗(売場)は存在する」という考えは大切ですよね。
まったく接客業の経験のない人が“接客慣れ”“接客の超基本”を経験するのはとても有効だと思います。ただ、それに加えて、中小の個人店が、雑貨を売る特有の接客方法があると思うんです。
マニュアル接客と違って、個性的な雑貨商品を買ってもらうための特有のちょっと踏み込んだテクニックがあるのかなと思うんですけど、川瀬さんどうですか。独自の販売テクニックはありますか。
臨機応変なアプローチ
川瀬: 話しかけられたくない“オーラ”を出している(笑)お客様もまれにいらっしゃるので、そういった場合は「いらしゃいませ」のお声だけ掛けて、ちょっと引いています。
何かお話したいのかなという感じの方には「これすごくいいんですよ」とか、「いい香りですよ」とかのきっかけを作って、話をどんどん進めています。それでハワイのお話までしていくことができたら、フレンドリーに感じてくださって、また来てくださる場合が多いです。
富本: それは、川瀬さんのお店にはハワイが好きな人がやってくるから。ハワイ嫌いは来ない。
川瀬: そうですね(笑)。
富本: あと、規模がある程度ある(10 坪)ので、不自然じゃないですよね。まず「いらっしゃいませ」のお声だけ掛けて、自由にお客様に店内をご覧になっていただいて、お客様からお問い合わせが あるまで他の作業をしていても。じゃあ、村越さんに聞きますけど、村越さんのお店では不自然ですよね。お客様をほっとくと(笑)。
村越: そうですね(笑)。4 坪の小さなスペースなので。
O: うちと同じくらいですね。
村越: そうなんです。同じくらい。すぐ見渡せる。
富本: 話しかけるなオーラが出てるお客様(笑)もいらっしゃいます? あの規模だと、黙って入って黙って商品をご覧になっている人の方が珍しくないですか?
村越: 黙って入っていらっしゃる方もけっこういるんです。そういう方に限って最後の会計の時に饒舌だったりとか、ちょっと恥ずかしかっただけなのかなって感じます。だからそのタイミングって言うか、空気を読むというのはすごくありますね。
富本: いらしたお客様とはお話を必ずしますか?
村越: だいたいする事が多いです。あと小さいお店なんですけど、滞在時間は1 時間くらいの方もいて、帰られたのかなって思ったら、しゃがんで熱心に商品を見ている。
一同: えー!
富本: それは、1 時間丁寧に店内の商品を見てるの?
村越: 見てくださってます。とても真剣に吟味してくださっているんです。うちは細かな商品ばかりなんですが、ぎゅうぎゅうに凝縮した商品の配置なんです。私が“のみの市”のイメージの掘り出し物がありそうな陳列の仕方がすごく好きなので。
O:うちもぎっしりと商品を陳列してます。「自分で見つけた」っていう感覚で買う方が楽しいって思う方が多いんです。
富本:「権威のある偉い人がデザインした逸品で…」みたいな商品ではないからですよね(笑)。
村越: やっぱり、そういう「掘り出し物」がありそうなボリュームのある陳列は喜ばれます。
富本: 美しくきちっとディスプレイする部分も必要だし、そういう場所も必要だけど、お客様に気軽に触ってもらうため、ラフに陳列するのも作戦と言うことですね。
O: 綺麗に並んでると、さぁーと見て帰ってしまいますよね。
富本: 売場の見応えですね。今日の皆さんのお店はかなり見応えがある。お客様は「まだここにある」「こんなものもある」という感じでご覧になっているのでは。
ネットショップの接客とは
あと皆さんのお店では積極的な会話は必要ということですね(一同うなずく)。もちろんお客様の気持ちを察しながらですが、お客様がお好きな雑貨の商品やテーマのお話を雑談からでもするということですね。大山さんのネットショップは、お客さんと雑談できませんよね。
大山: したくてもできないですね(一同笑)。メールや電話でお問い合わせがあったときには、もちろん丁寧にお答えします。
富本: ネットショップの接客にあたる部分は、HP の商品の説明の仕方やお問い合わせに対する答え方ですよね。あと、ご注文いただいて配送までの一連の作業もそうだと思うんですが、どういう事を心がけてい ます?メールの文章をあまり長くしないようにするとか、梱包も一工夫するとか。オマケをつけるとか。
大山: うちのネットショップの場合の接客の工夫はお客様に商品が素早く届くことだと思っています。お急ぎのお客様にとってはとても大切なことですから、そこはしっかりとやっています。
ラッピングやオマケはコストに跳ね返ってきますので、そこに力を入れるより、買いやすい価格帯の商品を維持していくのが、一番のサービスだと思っています。うちよりも趣味性の高い商品だったら、ラッピングを工夫するほうが良いのでしょうけれど。
富本: 大山さんのショップの商品は趣味性もある程度あるけれど、こだわり過ぎないちょうど良いデザインと価格の商品が多いですよね。コレクションするような趣味 性の高い商品でもないけれど、その辺のスーパーやホームセンターで売っている消耗品感覚のものでもない。そのデザインと価格帯の絶妙の案配が楽天さんで売 れる秘訣なのかなと感じています。
─雑貨屋さん運営の苦労、仕入方法、テクニック、アクシデント、嬉しいこと、将来の夢などのテーマは次回─
注):参加者またはその経営するショップに対して開業や経営に関するお問い合せはご遠慮ください。この座談会録に関するお問い合せは雑貨の学校まで。
川瀬真理子: 「ALOHA LOVERS(アロハラバーズ)」 |
【略歴】アパレル店、外資系企業勤務を経て、HP制作、ネットショップ運営などを経験。06 年にショップ「ALOHA LOVERS」を東京原宿にオープン。ショップの特長:「リゾートテイスト溢れるハワイアン雑貨やウェアを集めたセレクトショップ。元気に楽しくなれるビ タミンカラーの商品中心にウキウキした気分になれるお店にしています」 URL: http://www.alohalovers.com/ |
大山美枝子:「カジュアル雑貨ビューピィ」 |
【略歴】フリーのテキスタイルデザイナーとして 活動した後、03 年楽天に「カジュアル雑貨ビューピィー」出店。05 年Yahoo ショッピング、09 年アマゾンにも出店。ショップの年商は一億円が目前に。ショップの特長: 「インテリア雑貨を販売するショップです。主力商品はルームシューズ、スリッパ。この分野では国内ネットショップ最大の種類数の品揃えです」 URL: http://www.rakuten.co.jp/beau-p/ |
O.A:「T」 |
【略歴】音楽雑誌の編集、ライターとして活動中にアメリカン雑貨のファン に。オークションやフリーマーケットにて販売を経験した後06 年に東京下北沢に雑貨店「T」をオープンした。ショップの特長:「アメリカンテイストの雑貨を中心に子供から大人まで楽しめる店作りをしています。他の店 に負けない品揃えのアイテムをあえて2、3 点展開しています」住所: 東京都世田谷区北沢 |
村越加奈子:「mf collection gallery(エムエフコレクションギャラリー)」 |
【略歴】 専門商社の営業、企画職だったが結婚を機に退職。インテリア雑貨に興味を持ちはじめる。06 年に東京駒込の義母のブティックの半分を雑貨店にリニューアルオープン。ショップの特長:「ヨーロッパ製を中心にナチュラルな素材の少し個性のある色や柄 の雑貨と衣料品や、手作り作家の作品も扱っています」 URL: http://mfcg.blog90.fc2.com/ |
「月刊パーソナルギフト」10年5月号執筆文を加筆修正 (C)masato tomimoto
【ご注意】
・取材者に対し本記事に関するご質問はご遠慮ください。直接ご質問されましてもお答えできません。
・本記事に関するご質問は雑貨の学校までお願いします。
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