駒込の有名店のOGオーナーに聞く。開業と経営の成功
2006年にオープンした、東京駒込にある人気の雑貨店『mf CollectionGallery』。
閑静な住宅街の一角にある同店は約4坪(13.2m2)と狭いながらも、ヨーロッパテイストのひと味違うこだわりの雑貨がたくさん。
その品揃えとお客様に対する細やかな気配りが、お客様からの絶大な支持を得ています。オーナーは「雑貨の学校」2004年修了生の村越加奈子さん。
「雑貨の学校」の現在の受講生(09年5月生)の宮城雄一郎さんと房絵里奈さんが、人気店運営のポイントを聞いてきました。
お店を見て村越さんの説明をうけた後輩の二人は聞きたいことがたくさんあるそうで…。さぁ、どんな対談になるでしょうか。
雑貨屋さんのコンセプトがぶれた? ぶれてない?
房絵里奈:お店を始められた時のテイストやテーマ、アイテムは最初に決めていたと思いますけど、そこに違う系統の商品を加えていくタイミングとか、決断方法はどんなことが基準ですか?
村越加奈子:「雑貨の学校」へ通っていた時から考えていたお店のプラン、コンセプトからはぶれていません。ですが、お店をはじめてから、例えばハンドメイドが好きな主婦の方が多いとか、様々なお客様のニーズがどんどんわかってくるんで す。自分一人で日々接客しているので、「こういうの欲しいんだけど…」「こういうのはありますか?」など、お客様の声が直に聞こえてきますので、それらを 大きく参考にしていますね。
でも、お客様のご希望を何も考えずに、すべて“鵜呑み”にしてしまうと、テイストやテーマ、コンセプトがぶれてくるので、お店に合う合わないは、もちろん自分で決めて仕入れます。例えば今は、綿麻の靴下とか、天然素材の服などを探している主婦の方が多くて、そのような商品を増やすことで、ニー ズにあった商品セレクトをしています。
スタートは目新しいものをどんどん入れたくなりますが、そこを我慢して自分のお店らしさをある程度守るっていくと、「ここのお店で買いたい」と思ってもらえるようなお店に近づいてくると思っています。
コンセプトとはここでは店作りのテーマのこと。どんな外観イメージにするか。誰をお客様=ターゲット(想定)するか、どんな商品を扱うかなどの方向性を決めること。 |
どんな人に向けての雑貨屋さんの予定でしたか?
宮城雄一郎:ご家族が経営されていた洋服のお店をリニューアルされたそうですが、以前からのお客様(洋服の)を意識して、計画されたんですか? それとも、雑貨のお客様を新たに呼ぶつもりで、計画されたんですか?
村越:この店は以前は義母がやっていまして、初めに「雑貨屋をやりたい」と義母に言ったとき、実はすごく反対されたんですね。「こんなところで雑貨のようなものを売ってもホントに売れないから」って言われたんです(笑)。 シニアのマダムのお客様がとても多いお店でした。そういったお客様のちょっとしたサロンみたいになっているくらい。その昔からのお客様達をイメージするか どうか、最初はすごく迷いました。
でも、お店を始める前の1年間、店頭で手伝いをしまして、その間に意外と若い主婦の方がたくさん周りに住んでいらっしゃることに気づきまして、そういった方にはどういう商品がいいかしら?と考えたんですね。1年間手伝いながら、周辺にお住まいの方をじっくり観察していったんです。それで周辺の若い主婦の方を意識したコンセプトの雑貨のお店にしようと決めたんです。
季節遅れの商品はどうしていますか?
房:季節感のある商品に関してですが、春夏もの、例えば麻素材のストールとかは冬には販売できませんよね。季節が終わって売れ残ってしまった場合はその都度バーゲン(割引)販売されているんですか?
村越:大体そうですね。あまり在庫を持たない方がいいので季節毎にセールするのがいいと思っています。前の年の売れ残りを翌年、店頭に出すと全く同じものと気づくお客様もいらっしゃいますし(笑)。
雑貨も旬があって、流行遅れや季節遅れはあるので、そういう商品はセールにしてしまいます。雑貨ってあまり流行り廃りがなさそうでも意外とあるんです。
房:お店を拝見すると、同じ商品がいろんな場所に置いてあるんですが、その複数に陳列する理由はお店の雰囲気をやイメージを統一したいと言うことからですか?
村越:単に多く仕入れちゃって置き場がない(笑)という場合もありますが、こちらのお客様はありがたいことに、皆さん“宝探し”のように店内をじっくり見てくださるんですよね。こんなに狭くても1時間ぐらい見てくださる方もいるんですよ。
でも、見落とされることもあるんです。そういう時に商品を分散して置いておくと見つけていただけるんです。強く意識しているわけではないですが、効果としては、いろんなところに置いてある方が目につきやすいですね。
雑貨のネット販売はやらないのですか?
宮城:大人気のブログを拝見しました。とてもにぎやかな、あたたかい雰囲気のブログですね。インターネット販売はやってないのですか?
村越:ありがとうございます。もし、うちのブログがにぎわっているように見えるとしたら、お客様やブログ読者の皆さんのおかげだと思います。
ネット販売は今はやってません。すべて一人でやっているのでそこまでできるかな?という心配がありまして、「商品を売ってください」という メールをいただいた時だけ対応しています。いずれはやりたいと思っているんですが、リアルな接客が一番大切と思っているので、やはり店頭で直接見ていただ きたいんです。ネットでの通販は顔が見えないぶん、ちょっと不安なところもまだまだありますし。商品の仕入先によってはネット販売はやめてくださいってい うところもありますので。
宮城:ブログで紹介した商品を欲しいっていう方はいらっしゃいますか?
村越:ええ、たくさんいらっしゃいます。それを目的に遠くから来てくださったり。うれしいですよね。作家さんの一点ものの雑貨作品の場合は予約(取り置き依頼)して来られることもあります。ブログの影響はとても大きいですよ。
ご存じのように最近ネットが普及してきて、ありがたいことにほぼ無料でお知らせや宣伝ができますが、それってほんとにすごいことだと思います。
皆さんも開店されたらHPとブログだけでもされるといいですよ。
来ていただく努力はしてますか?
宮城:お教室も開催されてるんですね。
村越:最近はこの恵まれたスペースを使った方がいいかなと思って、お花の講座などをやって います。そういうお教室のリピートの方がすごく増えています。何もしないとやはりここは住宅街で駅から近いわけでもないので、そういう講座があるとついで に帰りに売場でお買い物くださって。ということにつながっていきます。そうそう、以前ボサノバ(音楽)のライブ演奏もやって、好評だったんですよ。
房:ライブ演奏まで。すごいですね、お教室の案内も最初からブログですか?
村越:最初からブログと店頭のお知らせと両方です。あと去年は頑張ってDM(ダイレクトメール)を一月おきに出しました。リピートの方が多くなってきているので、だいぶ定着してきたと感じています。最初はやはりハガキなどのアナログな方が心に残る場合もあります。
房:では、例えばレストランや高級ブランドショップのようにお誕生日とか記念日などを店頭でアンケートに書くと、誕生日のお祝いDMが届いたりするような、プラスアルファ的なことはされていますか?
村越:DMを持って来ていただいた方には何%オフとかのお値引きをやってみたことはありますね。あと、メルマガを最近始めました。お教室= ワークショップの案内などを書いてまめに発行しています。
雑貨屋さんを一人で運営するって大変ですか?
宮城:一人ですべてやられているんですか?
村越:そうです。基本的には一人でやっています。義理の母が隣のお店にいますが、最近は一人でやっていますね。一人で好きなようにできるっていう利点はあります。でもやらないと自分の首を自分でしめてしまいますね(笑)。意外と自分一人でやっていくのって好きなんです。
皆さん、開店後は体調など気をつけた方がいいですよ。一人だと休めないので。おかげで風邪をひかなくなりました。そういうのは気持ち、緊張感の問題ですよね。
注)店舗としての休業日はあり。
宮城:週末の方がお客さんは少ないですか?
村越:うちはそうですね。あと、天気にもよりますね。今日みたいに天気が良す ぎたら微妙で…(当日は快晴)。大雨でもやはり少なかったり…。でも時期にもよります。クリスマスとか、あと春先のギフトシーズンなどは天気はあまり関係 ありませんね。うちはちょっとしたプレゼント用のお買い上げがとても多いんです。そういうギフトラッピングもちょっと華やかに丁寧にすることがお客様に喜 んでもらえていると思っています。
仕入れはどんなところから?
宮城:最初の仕入れはやはり見本市ですか?
村越:そうですね。それと義母が大手の問屋さんから洋服を仕入れていたんです。雑貨もたくさん扱っていまして、よく義母と一緒に行って見ていたんです。そこから最初は仕入れたりしていました。
無理して、直接メーカーなどから仕入れようとして、例えば毎月いくら以上とかいろいろ条件があるんですが、そういうのを全部やっ ていくと在庫が多くなりすぎたり…。でも問屋さんの取扱範囲はある程度の限界があるし…。最初はけっこうはちゃめちゃでしたね(笑)。「続けていけるのか な」と思う時期もありましたが、だんだんわかってきて、上手くバランス良くまわしていけるようになったと思っています。皆さんも徐々に加減がわかってきま すよ。
宮城、房:今日はお忙しいところ、ありがとうございました。
村越 :「雑貨の学校」の受講者の皆さんのお役に立てれば嬉しいです。昔を思い出して楽しかったです。
★ 2009年6月取材(kaga)
房絵里奈(29歳) |
「雑貨の学校」09年5月生(現在受講中)。 美大卒業後より7年間、インテリアショップに勤務。新店舗オープン、VMD計画などディスプレイ全般に携わ る。NPO法人「メイド・イン・ジャパン・プロジェクト」の活動に関わりながら、自身の雑貨店開業に向けて勉強中。「好きなショップは、in Touch、kakitsubataなど。 感想:「お教室を催されたり、お客様との関係をとても大切にされている印象を持ちました。ブログで宣伝効果を高めるなどリアルなお話も聞けてとても勉強になりました」 |
宮城雄一郎(35歳) |
「雑貨の学校」09年5月生(現在受講中)。 コンピューター技術者(SE)を経て、和雑貨のお店を現在計画中。「販売経験はスーパーのアルバイト勤務しかありませんが、日本の伝統的なすばらしさを持つ商品を売るをコンセプトの店を開きたいと考えています」 感想:「実際にお店を開業、運営されている先輩のお話を直接聞けて、これから勉強する予定の内容を、リアルに先に知ることができ良かったです。売れなかった商品の扱い方なども、とても参考になりました」 |
村越加奈子 |
「雑貨の学校」2004年Cコース修了生。 mf collection galleryオーナー。専門商社OLの営業、眼鏡の商品企画を経て結婚を機に退職後、インテリア雑貨興味を持つ。義理の母のブティックの半分を雑貨店 「mf collection gallery」にリニューアルオープンして3年目になる。約4坪(13.2m2)の狭小ショップながら、たくさんの品揃え、丁寧な接客で多くの女性に支 持されている人気店。 感想:「私も開業前の事を思い出しとても刺激になりました。ありがとうございました」 |
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